僕は穴

ぽっかり空いた
目には見えない不思議な穴

僕の一番近くにいた人は
僕を見て泣くんだ

何かで蓋をすれば良いのに
何かで覆い隠せば良いのに
ただぼんやりと僕を見て

泣くんだ

あまりに見ていられなかったから
僕に似たヤツを
あの人の傍に送り込んでやったよ

アイツが僕の前に立ってくれれば
アイツが僕と離れた場所で騒いでくれれば
あの人は僕を見なくてすむだろ?

ところがさ

アイツは僕のとなりで背伸びして
僕のまわりで遊びだしたんだ

しかも
はしゃいで僕に飛び掛かって
僕を広げやがった

挙句の果てに
僕の中で昼寝までする始末

どうしてくれるんだ

これじゃあ僕を隠すどころか
余計あの人の目につくじゃないか

似てると思ったけど
やっぱり僕とは似ていない

あの人の心から僕を消す
良いアイディアだと思ったのに

バカだな アイツ

人の気持ちも知らないで

ホント
バカなヤツだ

・・・しょうがないヤツ

・・・

でも アイツが来てから
あの人は笑うようになった

泣かなくなったわけじゃないけど

怒ったり 笑ったり
驚いたり 喜んだり

アイツは僕を隠してはくれないけど

でも

あの人の事はアイツに任せて
僕は旅に出る事にするよ

きっと 大丈夫だろうから

そうしてさ

いつかアイツが穴になった時には
今度は僕が
アイツのまわりでおどけてやるよ

塞いでなんか やらないよ

アイツがしてくれたみたいにさ

穴の傍でもあの人が

怒ったり 笑ったり
驚いたり 喜んだり

できるように





僕は穴

あの人のことが大好きな
猫形の・・・













泣いてくれてありがとう

思ってくれてありがとう

あなたが泣いてくれるから
ぼくはぼくでいられたんだ

あなたが思い出してくれるから
ぼくはぼくでいられるんだ

だから

ぼくがいない事を謝らないで

ぼくに似たヤツに
笑う事を躊躇しないで

あなたが笑ってくれるから
ぼくはぼくを許せるんだよ

大丈夫

あなたがぼくを愛してるって
ちゃんと知ってるよ

普段は強がっちゃうけど
これはこっそり伝える ぼくのほんね

大好きなママ

ぼくの事 忘れないでね

でも

ぼくにとらわれないでね

大好きなママ

ママに出会えて 本当に良かった

ありがとうママ

大好きな、ママ。

たまに思い出して
笑ってくれると嬉しいな







最愛なるママへ
End
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